3. 複素数

 複素数についておさらいする。


●モチベーション

なぜ、複素数が必要なのか。それは、次項で説明する波動関数が複素数の関数だからである。何か難しい話が始まりそうであるが、決してそんなことはない。「波動関数」なんて言葉は大げさすぎるし、的外れである。概念自体はめっちゃシンプルで、なにも難しいことはない。

関数とは$ f(x)=x^2 $のようなものである。$x$が実数のとき、これは実数関数と言われ、$x$が複素数のときこれは複素関数と呼ばれる。$x$が実数でも返ってくる値$f(x)$が複素数のときもある。このような場合も複素関数と言われる。波動関数は複素関数なのである。

●複素数とは何か

すべての数は複素数である。まずそれをしっかり認識しよう。我々が日常で使うのは実数であるが、これは複素数の一部である。数の概念は下図のようになっている。

複素数とは実数に虚数成分を追加したものである。虚数とは何か、それは二乗すると1になる数字である。当然そんな数字は実数にはない。そこで、そんな数字があると想像(imagine)して、$i$と書く。つまり

\[ i^2=-1\]

である。この$i$自体も虚数であるし、それを何倍かした $2i, \ 1.7i, \ -0.54i$ なども虚数である。こんな虚数のことを英語ではImaginary numberという。

さらにこの虚数に実数を足す。$1+3i, \ -4+1.2i, \ 98239-3423.9i$ などである。これは実数と虚数が入り混じった数字で、複素数と呼ばれる。上記の虚数も、例えば $3i$ は $0+3i$ とみることもでき、複素数と言える。そういう意味では、実数も $3=3+0i$ とみれば、複素数の一部であることが理解できるだろう。


●複素数の計算

複素数も数なのだから、計算ができなければならない。ルールは簡単である。$i$がついているものとそうでないものをまとめるだけである。

\[ (2+3i) + (3-4i)=5-i\]

\[ (-3+i) - (1-4i)=-4+5i\]

などである。簡単すぎる。掛け算も同じである。但し、$i^2=-1$に注意しよう。

\[\begin{eqnarray*} (1+2i) \times 2i &=& 1\times 2i + 2i\times 2i \\ &=& 2i+4\times i^2 \\ &=& 2i+4\times (-1) \\ &=& -4+2i \end{eqnarray*}\]

\[\begin{eqnarray*} (1+2i) \times (2-i) &=& 1\times 2 + 1\times (-i)+2i\times 2+2i\times (-i) \\ &=& 2+(-i)+4i-2i^2 \\ &=& 2-i+4i+2 \\ &=& 4+3i \end{eqnarray*}\]

などである(計算ミスがあれば教えてください)。慣れれば難しくないだろう。


●複素数は2次元の数

実数は一本の数直線上の点として表せる。これに対して、複素数は実数成分と虚数成分で構成されており、実数と虚数に対応する2本の数直線で張られる平面上の点として表される。この平面を複素平面という。例えば、$4+3i$は以下の点である。

複素数の大きさという概念を紹介する。例えば、複素数$4+3i$の大きさとは何だろうか。4だろうか?3だろうか?複素数の大きさは、原点からの距離で定義される。つまりこの場合は5である(三平方の定理をつかった)。一般に、複素数$z=a+bi$ の大きさ $|z|$ は

\[ |z| = |a+bi| = \sqrt{a^2+b^2} \]

と定義される。但し、$a, b$ は実数である。


●複素共役(きょうやく?きょうえき?)

複素共役という概念もある。例えば、複素数 $4+3i$ の複素共役は $4-3i$ である。つまり、ある複素数 $z=a+bi$ の複素共役は、虚数成分の符号をひっくり返した $z^*=a-bi$ と定義される。このように、複素共役は $*$ をつけて表す。複素共役は、複素平面で言えば、実数軸に関して折り返した点になる。

複素数の大きさは、複素共役を使って計算することができる。例えば、複素数 $4+3i$ の大きさはその複素共役を掛けてルートをとることによって

\[ \sqrt{(4+3i)(4-3i)} = \sqrt{16-12i+12i-9i^2}=\sqrt{16+9}=5 \]

確かに大きさ5が出てくることが分かる。一般に、複素数 $z=a+bi$ の大きさの二乗 $|z|^2$ は

\[ |z|^2=zz^*=(a+bi)(a-bi)=a^2+b^2 \]

で得ることができる。

複素数について知っておくべきことは、大きさ(の二乗)の概念とその計算方法だけで十分である。

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